日本自律神経学会


学会概要

理事長挨拶

第7代日本自律神経学会理事長 黒澤美枝子

2022年10月に日本自律神経学会第7代理事長に就任した黒澤美枝子と申します。本学会は「自律神経」あるいは「自律機能」をテーマに、基礎研究の発展、臨床応用、人材育成、社会的啓蒙を目指しております。会員は臨床医学を中心に、基礎医学、東洋医学、リハビリテーションなど多岐の分野にわたります。歴代の理事長は初代の沖中重雄先生、2代目の宇尾野公義先生、3代目の平井俊策先生、4代目の岩田誠先生、5代目の黒岩義之先生、6代目の荒木信夫先生に至るまで、臨床医学の先生方でしたが、今回、初めて基礎医学を専門とする私が理事長に選出され、60余年の長い歴史を持つ本会(1956年に国際自律神経研究会日本支部会として発足、1973年に日本自律神経学会と名称を変更)の代表として重責を感じております。より一層魅力的な学会にすべく、努力していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。副理事長には臨床医学がご専門の山元敏正先生に就任して頂きました。

自律神経は、循環器、呼吸器、消化器、泌尿器、生殖器、眼など全身の種々の臓器に分布し、これらの機能を調節しています。そのため、本学会が関わる臨床医学の分野は、神経内科をはじめ、循環器科、呼吸器科、消化器科、泌尿器科、産婦人科、眼科など多様な診療科にわたります。基礎医学の分野は、分子レベルから細胞、組織、器官、個体レベルの研究・教育に携わる生理学、解剖学、薬学、生物学、心理学、スポーツ科学におよびます。さらに本学会には鍼灸、漢方、リハビリテーションなどの領域も含まれます。

自律神経は各臓器を支配し、その臓器機能を調節するのみでなく、血管を支配し血流を変化させるので、血流を介した様々な機能改善、機能悪化により全身機能とかかわります。血液にはホルモン、サイトカインが含まれるため、血流が変わることで、内分泌、免疫機能にも影響を及ぼします。自律神経はまた各内臓器官の個々の調節のみならず、臓器間の連携調節(脳腸相関、心腎相関など)に関わります。臓器間の連携は臨床医学、基礎医学の両面にわたり、重要なテーマとして昨今、本学会でも扱われています。さらに自律機能は、皮膚や骨格筋の刺激時に自律神経を介して変化します(例:体性ー内臓反射)。体性―内臓反射は鍼灸、リハビリテーションが内臓機能に及ぼす基本的なメカニズムとして注目されています。 このように「自律神経」を介する生理学的並びに臨床学的機構の解明は今後ますます重要性が高まると確信いたします。

これらの研究は、年に1回開催される「日本自律神経学会総会」で発表されています。総会では、研究発表の他、自律機能に関わる「教育講演」や「シンポジウム」、「基礎臨床のディベート」などのプログラムが組まれ、会員間のディスカッションが活発に行われています。そしてその内容は、年4回発刊している本学会の機関誌「自律神経」に掲載されております。自律神経誌の発表論文は、2019年(自律神経、第56巻)以降、J Stage上に公開されております(https://www.jstage.jst.go.jp/browse/ans/-char/ja)。2023年中には1巻から55巻についてもJ Stage上に公開する予定です。自律神経の研究・臨床をリードしてきた本学会の活動記録をご覧いただけると幸いです。

本学会ではまた、「自律神経」研究の推進を図るべく、特に優れた論文(掲載雑誌は問わない)に「学会賞」を選出おります。同時に機関誌「自律神経」への優れた論文の投稿を促す目的で、自律神経誌に発表された原著・症例報告の中から、毎年「論文賞」を選出しております。日本のすぐれた「自律神経研究」の芽を絶やさず、育てて行きたいと思っております。

本学会はまた、国際学会との連携も行ってまいりました。これまで国際自律神経学会(International Society of Neurovegetative Research、 ISNR、1955年創設)の第18回会議(1977年、東京、沖中重雄会長)と第20回会議(1990年、東京、吉川政己会長)を日本で開催した他、1999年に国際自律神経科学学会(International Society for Autonomic Neuroscience、ISAN)が創設された後は、ISANと連携し、2―3年に1度開催されるISAN会議を協賛しております。そして2007年(京都、岩田誠会長)と2017年(名古屋、黒岩義之会長)に日本でISAN会議を開催いたしました。今後とも国際的な自律機能研究の発展に協力、尽力していきたいと思います。

以上の活動は、各種委員会(編集委員会、学会あり方委員会、自律神経機能検査法委員会、医学用語委員会、国際渉外委員会、学会教育委員会、広報委員会、保険委員会、利益相反委員会、学会賞選考委員会)を介して行っております。今後とも、自律機能研究の発展に尽力し、大学・病院の研究機関、関連企業等と連携して、各種疾患を有する方々のためにその成果を社会に還元できるよう、取組んでまいります。

本学会へのご指導、ご支援をどうぞよろしくお願い申し上げます。

第7代日本自律神経学会理事長 黒澤美枝子